酒庵 田なか#3酒は、雪の茅舎に切り替え 旬の揚げ物をいただく 手前は、香ばしい目光と栗の様なホクホク根マガリ竹揚げ その奥に見えるのは肉質がしっかりして噛むほどに濃厚な味わいが滲み出てくる比内地鶏の焼き物そして、サクっとした食感が嬉しい そら豆と白海老をいただく あとは〆の絶品手打ち蕎麦へと進むわけだが その前に天ぷらのコッテリを取り除くため 爽やかなコハダで味覚をリセットする
這い蹲りながらも ここまで生き永らえた ささやかな人生 叶うならば 「あの時の、あの一言」だけでも
リセットできないものだろうかと・・・
彼女と知り合った頃の私は 定職にも就かず悠々自適な独身生活を満喫していたのだが 何を血迷ったのか なけ無しの金を叩いて 当時、流行り始めたばかりの「クリスマスデナー」へと出かけた
よせばいいのに ガラにもなく「エフリコギ」に高揚した私の口から出たオーダーは「生牡蠣二つ」・・・
こじゃれたデッカイ皿にポツンと並べられた二つの貝殻の横には三日月型にカットされたレモンが添えてあった
想像を絶する異変が二人を襲ったのは 次の日明け方からだった、上から・・・下から・・・
どうか、あの一言だけは
リセットして貰えませんか、 神様っ!
今でも、夏の岩牡蠣シーズンになると 思い出したように かみさんが その話を持ち出すんです。
【完】
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